「相続のとき、遺言に自分の名前がなかった…」
そんなときに考えてほしいのが「遺留分」という制度です。
法律では、配偶者や子どもなどの相続人には“最低限の取り分”が保証されています。
この記事では、遺留分の基本的な考え方から、実際の計算方法、請求の手続き、トラブル回避のポイントまでを、図解と実例を交えてわかりやすく解説します。
また、すぐに使えるExcel計算シートやチェックリストも配布しています。
「難しそう」と思っていた遺留分が、この記事を読めばすっきり理解できます。家族との話し合いに向けて、今すぐチェックしてみましょう!
✅ この記事でわかること
- 「遺留分ってどうやって計算するの?」
- 「実際の相続ケースでの取り分は?」
- 「兄弟姉妹がいる場合はどうなるの?」
初心者にもわかりやすく、図解と具体的な例でやさしく解説します。
遺留分確認・請求のためのチェックリスト
このチェックリストは、遺留分の確認や請求に必要な手順を分かりやすくまとめたものです。印刷や保存してご活用ください。
■ 基本事項の確認
- ☐ 被相続人が亡くなった日付を確認した
- ☐ 遺言書の有無を確認した(公正証書、書き置きなど)
- ☐ 法定相続人が誰かを確認した(戸籍を取得)
- ☐ 遺産総額を概算した(預貯金、不動産、有価証券など)
■ 遺留分の計算準備
- ☐ 法定相続分を調べた(配偶者・子・親の構成)
- ☐ 生前贈与や特別受益の有無を確認した
- ☐ 債務(借金や未払金)の存在を確認した
- ☐ Excelテンプレートなどで計算を試した
■ 遺留分の請求と手続き
- ☐ 遺留分を侵害されているかどうかを確認した
- ☐ 請求先(受遺者や贈与を受けた人)を特定した
- ☐ 内容証明郵便で請求書を送付した
- ☐ 話し合い・調停・裁判などの選択肢を整理した
■ その他・専門家の相談
- ☐ 不動産の価格を時価で評価した
- ☐ 家族間での話し合いの準備をした
- ☐ 弁護士や司法書士などに相談した
- ☐ 必要書類を整理・コピーした(戸籍・登記簿・財産目録など)
■ メモ・備考欄
______________________________________________________
📌 そもそも「遺留分」とは?
遺留分(いりゅうぶん)とは、法律で定められた「最低限の相続の取り分」のことです。たとえ遺言で「財産を全部他の人に渡す」と書かれていても、配偶者や子どもなどの法定相続人には、一部の財産をもらえる権利が残されています。
たとえば「長年面倒を見てくれなかったから子どもには渡さない」と遺言に書かれていても、法律は最低限の取り分(遺留分)を守ってくれます。
ただし、2019年の法律改正以降は、遺留分は現物の財産(不動産や宝石など)ではなく、お金(現金)で請求することしかできなくなっています。

📐【基本の公式】遺留分の計算ステップ(全体の流れ)
- 遺産総額を確定する
- 預金・不動産・株などに加えて、生前の贈与や特別受益(結婚や住宅購入時のお金の援助など)も含めて合計します。
- 法定相続分を確認する
- それぞれの相続人が、法律でどれくらいの割合を相続するのかを出します。
- 遺留分割合を掛ける
- 法定相続分に「遺留分割合」を掛けて、実際に最低限もらえる金額を算出します。

🧾 遺留分割合の早見表(2025年版・かんたん比較)
法定相続人の構成 | 遺留分の割合(遺産全体に対して) |
---|---|
配偶者と子どもがいる場合 | 法定相続分 × 1/2 |
配偶者と直系尊属(親など)の場合 | 法定相続分 × 1/2 |
子どものみの場合 | 法定相続分 × 1/2 |
親のみ(子・配偶者がいない) | 法定相続分 × 1/3 |
兄弟姉妹のみ | ❌ 遺留分なし |
※兄弟姉妹は、遺言で除外されても文句が言えないと法律で決まっています。
🖼【図解】ケース別:遺留分の具体的な計算例
例1:配偶者と子ども2人(計3人)の場合
- 遺産総額:6000万円
- 相続人:配偶者+子2人
法定相続分:
- 配偶者:1/2(3000万円)
- 子ども2人:1/4ずつ(1500万円 × 2人)
遺留分割合:それぞれの法定相続分 × 1/2
- 配偶者:3000万 × 1/2 = 1500万円
- 子ども1人あたり:1500万 × 1/2 = 750万円
✅ 遺留分合計:1500万(配偶者)+750万×2(子)=3000万円
例2:子ども1人しかいないが、知人に全額譲る遺言があった場合
- 遺産総額:1億円
- 相続人:子ども1人
- 知人に全額寄付予定の遺言あり
子の法定相続分:全額 → 遺留分は1/2 → 5,000万円
🔔 子どもは、知人に対して5000万円を金銭で請求できます。
例3:親のみが相続人で兄弟姉妹もいるケース
- 遺産総額:3000万円
- 相続人:父1人のみ(配偶者・子なし)
- 遺言で兄弟に全額遺贈予定
親の法定相続分:全額 → 遺留分:1/3 → 1,000万円
📌 兄弟には遺留分がないため、父が全額を受け取る法的根拠あり。


✏️ 実際に計算してみよう【Excelテンプレート対応】
実際にテンプレートを使った記入例をご紹介します!
Excelに以下のように入力するだけで、遺留分の侵害額や請求金額が自動で算出されます。
氏名 | 続柄 | 法定相続分 | 遺留分割合 | 遺留分額 | 実際取得額 | 侵害額 | 請求相手 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
山田 太郎 | 配偶者 | 1/2 | 1/2 | 2,500万円 | 2,000万円 | 500万円 | 知人A |
山田 花子 | 子 | 1/4 | 1/2 | 1,250万円 | 500万円 | 750万円 | 知人A |
山田 次郎 | 子 | 1/4 | 1/2 | 1,250万円 | 1,000万円 | 250万円 | 知人A |
📌 ポイント:この表は遺産総額1億円、債務1,000万円、生前贈与0円のケースをもとにしています。配偶者+子2人が相続人で、知人に全額遺贈された場合を想定しています。
遺留分計算Excelの構成
シート名 | 内容 | 主な機能 |
---|---|---|
① 基本情報 | 遺産総額・相続人一覧入力 | 遺産総額・贈与・債務・法定相続人を入力 |
② 自動計算 | 法定相続分・遺留分・侵害額の自動計算 | IF、ROUND関数で自動算出・色分け表示 |
③ 分割案 | 法定通り・調整後の分配案表示 | 金額の再分配パターンを自動生成 |
④ 請求書テンプレート | 内容証明請求書サンプル | 相続人名などを差し込み印刷可能 |
①基本情報シート | 入力項目 | 備考 |
---|---|---|
B2 | 遺産総額(万円) | 例:10,000 万円(1億円) |
B3 | 債務総額(万円) | 借金・未払い等がある場合 |
B4 | 生前贈与額 | 特別受益も含む |
A6〜 | 相続人の氏名 | 自由に追加可能(10人まで) |
B6〜 | 続柄(配偶者・子・親など) | プルダウン選択式 |
C6〜 | 実際に受け取った財産 | 贈与・遺贈なども記載 |
② 自動計算シート | 項目 | 説明 |
---|---|---|
A | 氏名 | 自動反映 |
B | 続柄 | 自動反映 |
C | 法定相続分 | 自動計算 |
D | 遺留分割合 | 続柄に応じて自動設定 |
E | 遺留分額 | C × D ×(遺産総額+贈与−債務) |
F | 実際取得額 | 贈与+遺贈などの受取分 |
G | 差額(侵害額) | E − F:ここが請求対象 |
H | 請求すべき相手 | 手動入力可(知人、親族など) |
③ 分割案
- 法定相続分に基づく配分案を自動表示
④ 内容証明用 請求書テンプレート
- 請求日・請求者・相手・金額を自動反映
- そのまま印刷可能なレイアウト
⏱ 計算ミスを防ぐためのポイント
- 生前贈与や援助(特別受益)は忘れずに足す
- 借金やローン(債務)は引く
- 不動産の価格は時価に近い評価を使う
- トラブルになりそうなら、早めに弁護士など専門家に相談
遺留分の計算は比較的シンプルですが、実際の請求では人間関係の配慮や交渉術も重要です。

司法書士・弁護士の無料相談窓口一覧リンク集
全国共通:法テラス(日本司法支援センター)
- 電話/チャット/メール相談(無料)
0570‑078374(ナビダイヤル)または03‑6745‑5600(IP電話・携帯など)
平日 9:00〜21:00、土曜 9:00〜17:00。秘密厳守 - 対面・オンライン相談予約
全国の地方事務所で対応。面談・電話・Webのいずれか選択可 - 費用立替制度あり
経済的条件を満たせば、弁護士・司法書士費用を分割で立て替えてもらえる
⚖️ 全国:各司法書士会の無料相談センター
- 日本司法書士会連合会 総合相談センター
全国約150カ所で「相続」など市民向け無料相談を実施 - 東京司法書士会(四ツ谷)
面談・Web相談(Zoom)、予約制・無料
平日 9:00〜16:30、相談1人40分以内
TEL: 03‑3353‑9205
各地方の司法書士会でも無料相談を行っています。
利用前に確認したいポイント
- 無料相談は資力条件あり(法テラスの民事法律扶助制度)
- 相談は予約制が一般的(電話・Webなど)
- 1件3回まで無料・各相談時間30〜40分の設定が多い
- オンライン相談に対応する会も増加中
まとめ:遺留分の計算は「数字」だけでなく「配慮」も大切
遺留分の計算は数字で解決できる部分ですが、相続は人間関係や気持ちの問題も関わってきます。 書類や証拠の準備をしっかりして、必要なら第三者(弁護士・司法書士)などの専門家に相談しましょう。
家族が納得して円満に相続できるように、早めの準備が安心です。
コメント