親の家を相続したけれど、遠方に住んでいて手をつけられない…そんな理由で空き家をそのままにしていませんか?
実は、放置された空き家が「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税の優遇がなくなったり、行政から修繕や解体を命じられたりするリスクがあります。
私自身も空き家を相続した経験がありますが、何もしないままだと費用も手間もどんどん増えてしまうことを痛感しました。
今回は「特定空き家」とは何か?どんな条件で指定されるのか?もし指定されたらどうすればいいのか?など、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
特定空き家とは?

「特定空き家(とくていあきや)」とは、放置されて危険・不衛生・景観悪化などの状態にある空き家のうち、行政(市町村)から正式に指定された空き家のことをいいます。
これは2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」に基づき、行政が判断・指定します。
特定空き家の定義(空家法 第2条2項)
以下のいずれかに該当すると、市町村が「特定空き家」と判断します:
- 倒壊などの危険があるもの
→ 屋根や外壁の崩落がある/台風や地震で倒れる可能性がある など - 衛生上有害となるおそれがあるもの
→ 害虫の発生、ごみの放置、動物の死骸の放置 など - 景観を著しく損なっているもの
→ 外観が著しく劣化/落書き、破損、草木の繁茂で地域の景観に悪影響 - 周囲の生活環境の保全を図るために放置が不適切と認められるもの
→ 不審者の侵入や放火のリスクがある、近隣に悪影響がある
以下の項目に1つでも当てはまる場合、市町村から「特定空き家」に指定される可能性があります。
✅ = 該当の可能性あり / ☐ = 要確認
- ☐ 建物が傾いていたり、屋根・外壁が崩れかかっている
- ☐ 窓ガラスが割れており、修繕されていない
- ☐ 敷地内にゴミや廃棄物が放置されている
- ☐ 雑草や木が生い茂り、道路や隣地に越境している
- ☐ 動物の死骸や害虫の発生がある
- ☐ 落書きや破損箇所がそのまま放置されている
- ☐ 放火・不審者の侵入が心配される構造になっている
- ☐ 周囲から苦情や通報を受けている
- ☐ 建物の所有者や管理者と連絡が取れない状態が続いている
- ☐ 過去に市町村から指導や注意喚起を受けたことがある
📌 アドバイス:3つ以上該当する場合は「特定空き家」に指定されるリスクが高まります。早めに市町村や専門家へ相談しましょう。
⚠️ 特定空き家に指定されるとどうなる?
特定空き家に指定されると、以下のような措置が取られます:
区分 | 内容 |
---|---|
✅ 行政指導 | 所有者に対して「除却・修繕・立木伐採」などの助言や指導が入る |
✅ 勧告 | 従わない場合「固定資産税の住宅用地特例」が解除され、税額が最大6倍に |
✅ 命令 | 勧告を無視すると、命令(法的義務)に移行し、違反すれば50万円以下の過料 |
✅ 行政代執行 | 命令に応じないと、市町村が強制的に解体・費用は所有者に請求 |
💬 実際の事例(例)
- 千葉県某市:10年以上空き家となっていた木造住宅が屋根の崩落で通報され、「特定空き家」に指定。
→ 勧告後も放置され、最終的に市が解体を代執行(費用180万円を請求) - 奈良県某町:野良猫が集まり不衛生な空き家に苦情多数
→ 所有者不明だったが、固定資産税の課税記録から親族に連絡し、自主解体に至る
所有者が空き家に対して何の対応もせず放置し続けた場合、市区町村(行政)は「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空家法)」に基づいて、段階的に強い措置を取ることができます。
以下にその流れと結果をわかりやすく説明します。
✅ 空き家所有者が対応しないとどうなるか?
①【助言・指導】
- 最初は「改善してください」という通知や電話、文書による助言・指導が行われます。
- 対象:雑草の除去、ゴミ撤去、外壁の補修など
- ここで対応すれば、ほとんどの場合は問題になりません。
②【勧告】→ 固定資産税の優遇解除!
- 助言を無視すると、「特定空き家」に指定される可能性があり、勧告が行われます。
- 勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(最大1/6)が解除され、税金が約6倍に増加します。
例:年2万円の固定資産税 → 勧告後は12万円に
③【命令】→ 無視すれば罰金も
- 勧告にも従わないと、行政は**法的な「命令」**を出します。
- この命令を無視した場合、**50万円以下の過料(罰金)**が科される可能性があります。
④【行政代執行】→ 強制解体+費用請求
- 命令すら無視すると、行政が強制的に空き家を解体・撤去することができます。
- これを「行政代執行」と呼びます。
- 解体費用は所有者に請求され、支払わない場合は財産を差し押さえられることもあります。
実際の事例:
- 宗像市での代執行解体費:約440万円 → 所有者に請求
🏘 空き家対応の流れ(説明付き図解)
空き家を放置した場合、行政による対応が段階的に進みます。下記に、その流れをわかりやすく説明します。
-
① 空き家の確認・情報収集
市区町村が、地域内の空き家の実態を調査します。近隣住民の通報などもきっかけになります。 -
② 所有者への連絡・指導
所有者に対して、現況の改善を求める指導が行われます。ここで改善すれば、行政介入は回避できます。 -
③ 特定空き家の指定
危険・衛生上有害・景観を著しく損なうなどの要件を満たすと「特定空き家」に指定されます。 -
④ 勧告・命令
所有者に対し、修繕や撤去を命じる措置命令が出されます。従わないと固定資産税の軽減措置もなくなります。 -
⑤ 行政代執行
所有者が命令に従わない場合、行政が代わりに解体などを行い、その費用は所有者に請求されます。
💡 ワンポイントアドバイス:
特定空き家に指定される前の「指導段階」で対応すれば、費用や負担を最小限に抑えられます。早めの対応が肝心です。
⚠️ 所有者不明でも代執行されるケースあり!
所有者が亡くなっていて相続登記されていない、連絡がつかないなどの「所有者不明土地・家屋」の場合でも、次のような流れで略式代執行や裁判所申立による管理人選任→解体が行われています。
🏙 市区町村別・勧告事例一覧
東京都大田区(平成29年)
- 状況:所有者不明で長年放置され、屋根や外壁が崩落寸前の空き家。
- 対応経過:
- 市が調査し「特定空き家」と判定。
- 家庭裁判所へ「不在者財産管理人選任」を申請。
- 指名された弁護士が2017年10~11月に解体を実施
東京都世田谷区(平成29年)
- 状況:所有者不明、屋根の崩落や飛散など保安上危険な状況。
- 対応経過:
- 市が「特定空き家」と認定し、家庭裁判所に申立。
- 2017年7月、財産管理人による解体が完了
福岡県宗像市(平成29年2月・略式代執行)
- 状況:3年間の放置で屋根・外壁に崩落箇所あり。
- 手続き:
- 地元自治会から通報により市が現地調査、特定空き家に認定。
- 相続人不明と判断し略式代執行を実施(解体)。
- 解体費440万円、固定資産税台帳などで所有者不明でも対応
京都市(平成22〜29年・長屋妻住戸)
- 状況:老朽化が進行して景観悪化・危険状態。
- 手続き:
- 空家条例に基づき「助言・指導」「勧告」を実施。
- 勧告無視後、住宅用地特例を外し、事業者による売却→除却
尼崎市(平成28年2月・勧告)
- 状況:4軒長屋の妻住戸が崩壊し、火災・異臭の発生も。
- 対応:
- 危険空家条例により勧告。
- 所有者は不動産業者に売却し、業者が除却
大田区・世田谷区(平成29年)
- 特徴:所有者不明の倒壊間近の物件に対して家庭裁判所へ申立て、管理人選任後に解体。
- 結果:行政代執行により物件を処分
⚖ 全国の勧告件数(国土交通省調査)
- 平成27年度から令和4年度までの8年間で、累計3,078件の勧告が市区町村から実施されました 。
- また、令和元年度時点では 1,050件の勧告、131件の命令、50件の行政代執行、146件の略式代執行が行われています。
✅ 主な対応パターン
ステージ | 主な内容 |
---|---|
助言・指導 | 所有者へ改善を促す初期対応 |
勧告 | 固定資産税特例の取り消し→税負担増 |
命令 | 改善不履行→50万円以下の過料 |
代執行 | 行政が強制的に改善・解体し費用回収 |
📌 ポイントまとめ
- 東京都大田区・世田谷区:所有者不明の空き家に対し、家庭裁判所を通じて解体(行政代執行)を実施。
- 全国的には勧告が頻繁に行われており、特にリスクが高い空き家には命令や代執行の例も多数。
- 勧告を受けると固定資産税の優遇が解除されるほか、命令無視で過料(最大50万円)のリスクも
- 所有者不明物件ほど行政代執行が増加(例:宗像市、大田区)。
- 条例+段階的対応が効果的で、京都市や尼崎市で自主管理の流れができています。
- 全国では助言から代執行まで数万件の対応実績があり、特定空き家問題への対応が着実に進んでいます
特定空き家を避けるには?(対応策)
- 定期的に草木の手入れ・修繕をする
- 空き家管理代行サービスを利用する(3000〜5000円/月〜)
- 売却・賃貸・空き家バンクへの登録など、活用を検討する
- 自治体の「空き家無料相談」や補助金制度を活用する
状況 | 取るべき対応 |
---|---|
空き家に住む予定がない | 早めに売却・貸出・空き家バンク登録などを検討 |
管理できない | 空き家管理代行(月3,000円~)や修繕業者へ委託 |
相続未登記 | 相続登記の義務化(2024年~)に合わせて早めに手続き |
金銭的に難しい | 自治体の解体補助金や相談窓口を活用する |
空き家に関する相談窓口リスト
📞 全国対応|空家・空地管理センター(NPO法人)
通話・相談無料(9:00‑17:00)
0120‑336‑366
全国の自治体と連携したワンストップ相談窓口
🏛 山口県内の自治体相談窓口(例)
- 下関市:住宅政策課 ☎083‑231‑1941
- 宇部市:住宅政策課 ☎0836‑34‑8252
- 岩国市:建築住宅課 ☎0827‑29‑5138
- 山口県庁:住宅課民間住宅支援班 ☎083‑933‑3883
🏙 広島市(区役所建築課等)
- 中区役所 建築課 ☎504‑2579
- 南区役所 建築課 ☎250‑8960
- 安佐南区役所 建築課 ☎831‑4952
- など、各区役所の建築・環境課で相談受付
🧭 法務局・専門家相談
- 最寄りの法務局・地方法務局(登記手続や所有者調査)
- 司法書士会・弁護士会による相続・空き家相談(例:福山総合相談センター等)
- 民間空き家相談窓口(LIFULL空き家相談など)}
📌 ワンポイントアドバイス:
– 最初は自治体に相談
– 登記や所有者調査は法務局へ
– 相続・トラブル対策は司法書士や弁護士へ
– 遠方の空き家管理には民間サービスも有効
結論
「何もしない」では済まされません。
放置を続けると、税金増→罰則→強制解体+費用請求という厳しい流れになります。
「対応に困っている」「誰に相談したらいいかわからない」場合は、市区町村の空き家対策課や地域包括支援センター、専門家(司法書士・行政書士)に相談することが一番の近道です。
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