親や祖父母から実家を相続したけれど、今住む予定はないし…と、そのままにしていませんか?
空き家の相続は「相続登記」や「管理の責任」など、思った以上にやるべきことがたくさんあります。
この記事では、実際に空き家を相続した筆者が、自分の経験をもとに「登記の必要性」「手続きの進め方」「空き家の活用方法」まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
「とりあえず放置」は後悔のもと。必要なステップを押さえて、空き家の負担を「資産」へ変えていきましょう!
はじめに

相続した実家が「空き家」だった場合の対応とは?
親や祖父母が亡くなったあと、実家を相続することになったけれど、そこに住む予定がない…そんなケースは今の日本では珍しくありません。たとえば、「遠方に住んでいるため管理ができない」「すでに自宅を持っていて引っ越す予定がない」という方も多いのではないでしょうか。
空き家を相続してそのまま放置していると、草木が伸びて近所から苦情が来たり、老朽化が進んで危険な状態になったりすることも。まずは、自分が何を引き継いだのか、今後どうすべきかを把握するところから始めましょう。
登記を怠ると発生するリスクについて
相続した空き家は、放置していても自動的に「あなたの名義」にはなりません。法務局に登記(名義変更)をしない限り、公的には亡くなった方のままになっています。
この「登記をしない」状態を続けると、いざ売却しようとしても手続きができなかったり、相続人同士でトラブルになったりする可能性があります。また、2024年の法改正により、相続登記は義務化され、怠った場合は罰則の対象となる場合もあるため注意が必要です。
実際、知人の例では、親の家を数年放置していたところ、いつの間にか雨漏りがひどくなり、解体費用が高額になったうえに、売却するにも登記していないせいで手続きが長引いてしまったそうです。こうした事態を避けるためにも、早めの対応が大切です。
1.空き家を相続したら最初にすべきこと

所有者変更に必要な「相続登記」とは
空き家を相続したら、まず最初に考えるべきなのが「相続登記」です。これは、亡くなった方から新たに相続した人へと、名義を正式に変更するための手続きです。
つまり法務局に対して「この不動産の名義を亡くなった方から自分に変更してください」と届け出る作業です。
たとえば、あなたのお父さんが亡くなり、その家を相続することになった場合でも、何もしないままだと法務局の記録上はまだ「お父さんの持ち物」のまま。こうした状態では、その家を売ったり貸したりといった処分ができず、税金の通知や管理責任もあいまいになります。
登記を行うことで、ようやく法律的にもその家の所有者として認められ、売却や賃貸などの手続きも可能になります。たとえば、「兄弟で実家を相続したが、名義は長男にまとめた」というような場合も、必ずその内容を登記に反映させる必要があります。
逆に言えば、登記をしないと売却はもちろん、空き家の解体や補助金の申請もスムーズに進まないのが実情です。相続したら、まずはこの登記を行うことが大前提です。
「登記って難しそう」と思うかもしれませんが、基本的には書類をそろえて提出するだけ。ただし、誰が相続するかが決まっていない場合は、次のステップで説明するような協議が必要になります。
相続人の範囲と協議の進め方
相続登記をするには、まず「誰がその家を相続するか」を明確にしなければいけません。
空き家を登記するためには、「誰が相続人か」を明確にし、全員の合意を得る必要があります。相続人は、配偶者や子ども、場合によっては兄弟姉妹が含まれることもあります。
たとえば、「兄弟3人で親の家を相続することになったけれど、誰も住みたくないし管理もしたくない」という場合は、話し合って「一人が相続する」「売却して現金で分ける」といった結論を出す必要があります。話し合いの結果「長男が空き家を引き継ぐ」ことに他の相続人も納得しているなら、長男の名義で登記が可能です。
その結果を「遺産分割協議書」という形で文書にまとめ、全員の署名・押印をそろえることで、登記が可能になります。
話し合いがうまくいかないと、手続きが進まず、空き家の状態も長引いてしまうため、できるだけ冷静に、早めに話し合いを始めることが大切です。

相続放棄・限定承認との違い
家の相続は「必ず受けなければならない」ものではありません。実際には、不要な空き家や借金付きの不動産を相続したくないという人も多くいます。
そうした場合には、「相続放棄」や「限定承認」という制度を利用することができます。相続放棄は一切の財産を受け取らない選択、限定承認は「プラスの財産の範囲で借金も払う」という条件つきの相続です。
たとえば、築50年の空き家を相続することになったが、リフォームにはお金がかかり、売るにも価値が低そう…というようなケースでは、放棄を選ぶ人も少なくありません。ただし、これらの制度は「相続を知ってから3か月以内」に家庭裁判所へ申請する必要があるため、悩んでいる時間は意外と短いのです。
このように、空き家を相続したからといって、すぐに引き継がなければいけないわけではありません。まずは状況を冷静に見極め、自分にとって最適な選択を考えてみましょう。


2.空き家相続に伴う登記手続きの進め方
必要書類と申請手順
相続登記を行うには、いくつかの書類をそろえる必要があります。まず準備すべき基本的な書類は以下のとおりです:
- 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
- 相続人全員の戸籍謄本と住民票
- 固定資産評価証明書(空き家の評価額が記載されたもの)
- 登記事項証明書(不動産の登記情報を確認するもの)
- 遺産分割協議書(相続人全員が署名・押印したもの)
これらを用意したら、管轄の法務局に登記申請書を提出します。書類の不備があると差し戻されてしまうため、事前に法務局のホームページや窓口でチェックリストを確認しておくと安心です。
たとえば、ある方は父親名義の実家を相続する際、戸籍をひとつだけ取り寄せたところ、出生からのつながりが確認できず、追加で取り直すことになり登記が1か月遅れたというケースもあります。
登記申請の期限と法改正ポイント
2024年4月の法改正により、相続登記は「相続の開始を知った日から3年以内に申請しなければならない」と法律で義務化されました。これまでは登記が任意だったため、手続きを放置する人も多かったのですが、今後は罰則(過料)も設けられるため注意が必要です。
たとえば、相続の事実を知っていながら3年以上放置していた場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。特に兄弟間で話し合いが進まずに登記を先延ばしにしていると、知らぬ間に義務違反となるリスクも。
「相続はしたけど、まだ登記していない」という方は、できるだけ早めに動き出すことが大切です。
自分で行うか、専門家に依頼するかの判断
登記手続きは自分でも可能ですが、書類が多く、手続きもややこしいため、不安がある方は司法書士に依頼するのも一つの方法です。
費用の目安としては、司法書士への依頼で5万〜10万円程度(登記費用・書類作成代含む)かかりますが、「忙しくて役所に行く暇がない」「書類に不備が出るのが不安」という方にはおすすめです。
実際に、仕事で忙しい方が登記を自分で進めようとしたものの、何度も法務局に通う羽目になったため、結局は専門家に依頼してスムーズに完了したという声も多く聞かれます。
自分で行うかどうかは、時間・手間・書類の扱いに慣れているかなどを基準に判断するとよいでしょう。
📝 遺産相続した空き家の登記手続きの流れ(ステップごと)
1. 相続人と財産を確認する
- 被相続人(亡くなった方)の戸籍をすべて集めて、誰が法定相続人かを調べます。
- 相続財産(家や土地)を把握し、誰が引き継ぐかを話し合って決めます。
2. 遺産分割協議書を作成(複数人で相続する場合)
- 「この家は長男が相続する」など、相続人全員で合意した内容を文書にします。
- 全員の署名と押印が必要です(実印+印鑑証明書)。
3. 必要書類をそろえる
書類名 | 説明 |
---|---|
被相続人の戸籍謄本 | 出生から死亡まで連続したもの |
相続人全員の戸籍謄本 | 続柄を確認するため |
被相続人の住民票の除票 | 最後の住所確認のため |
相続人の住民票 | 新たな登記名義人の情報 |
固定資産評価証明書 | 登録免許税の計算に必要 |
登記事項証明書 | 登記内容の確認用 |
遺産分割協議書 | 任意。ただし共有状態を避けたいとき必須 |
登記申請書 | 法務局に提出(様式あり) |
4. 法務局へ申請
- 書類をそろえて、物件所在地を管轄する法務局に提出します。
- 不備があると受付されないため、事前に相談窓口を利用すると安心です。
💰 登記にかかる費用の目安
費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
---|---|---|
登録免許税 | 固定資産評価額 × 0.4% | 評価額1,000万円なら 4万円 |
書類取得費 | 約5,000円前後 | 戸籍・住民票などの取得費用 |
印鑑証明書 | 1通300円程度 | 相続人の人数分 |
司法書士報酬 | 約5〜10万円 | 自分でできれば不要 |
✅ 実際のケース例:
固定資産評価額:800万円
登録免許税:800万円 × 0.004 = 32,000円
その他書類費:約5,000円
司法書士に依頼:報酬約60,000円
合計:約97,000円
🔍 自分で登記できる?専門家に頼むべき?
登記は自分でも可能ですが、書類のミスや記入漏れがあると再提出になるため、以下のような方には司法書士に依頼するのがおすすめです:
- 忙しくて時間が取れない
- 法務局が遠くて行けない
- 相続人が多く調整が大変
登記申請書の記入例とテンプレート
■ 提出先:〇〇法務局(不動産の所在地を管轄する法務局)
■ 件名:所有権移転登記(相続)
【登記申請書 記入例】
- 1.登記の目的:所有権移転
- 2.原因:令和〇年〇月〇日 相続
- 3.相続人(登記名義人):
住所:東京都新宿区〇〇丁目〇番〇号
氏名:山田 花子 - 4.被相続人(登記簿上の名義人):
住所:東京都新宿区〇〇丁目〇番〇号
氏名:山田 太郎 - 5.不動産の表示:
所在:東京都新宿区〇〇丁目
地番:〇番〇
地目:宅地
地積:100.00㎡ - 6.課税価格:金 8,000,000円
- 7.登録免許税:金 32,000円(課税価格の0.4%)
8.添付書類チェックリスト
- 被相続人の戸籍(出生から死亡まで)
- 相続人の戸籍謄本
- 住民票の除票(被相続人)
- 住民票(相続人)
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書
- 登記識別情報または登記済証(あれば)
- 9.日付:令和〇年〇月〇日
- 10.申請人:山田 花子(印)
〒160-0000 東京都新宿区〇〇丁目〇番〇号
電話:03-xxxx-xxxx
📌 注意:提出は2部(正本+副本)。収入印紙800円分を申請書に貼付してください。
📝 ワンポイントアドバイス
- 2024年の法改正で、相続登記は3年以内の申請が義務化されました。過ぎると10万円以下の罰則がある場合もあります。
- 空き家は放置すると、倒壊や苦情、税金などのリスクも。早めの登記・活用を検討しましょう。
3.空き家相続後に考える活用・売却の選択肢
登記後にできること(売却・賃貸・空き家バンク)
無事に相続登記が完了すると、その空き家の「法的な所有者」として活用方法を自由に選べるようになります。たとえば、「使う予定がないので売却したい」「地域の空き家バンクに登録して移住希望者に貸したい」など、さまざまな選択肢があります。
あるご家族では、祖父母の家を売却するか悩んでいたところ、自治体の空き家バンクに登録することで、子育て世帯の移住希望者とマッチし、賃貸契約に成功しました。空き家が再び人の暮らしに使われるのは、地域にもプラスの影響を与えることがあります。
売却や賃貸を検討する際は、地元の不動産会社に相談したり、空き家バンクの窓口に登録することで、よりスムーズに進めることができます。

固定資産税や管理費の負担
空き家を持ち続ける場合、忘れてはいけないのが「固定資産税」や「維持管理のコスト」です。住んでいなくても、建物と土地に対する税金は毎年かかりますし、庭の草刈りや建物の点検など、放置すればするほど劣化し、近隣トラブルの原因にもなります。
たとえば、知人の家では、屋根瓦の一部が強風で落ちてしまい、通行人に当たりそうになったという事例がありました。空き家であっても「所有者の責任」が問われるため、管理を怠ると思わぬトラブルに発展することも。
定期的な見回りや、必要であれば管理代行サービスを検討するのもよい選択肢です。
補助金や空き家活用制度の活用方法
最近では、多くの自治体が空き家対策として、さまざまな補助制度を用意しています。たとえば「老朽空き家の解体費用の一部を補助」「空き家バンク登録後の改修費の支援」「リフォーム助成金」など、条件を満たせば数十万円単位の補助が受けられることもあります。
実際に、築50年の家を相続したある女性は、「空き家改修補助金」を利用してキッチンとトイレを新しくし、地方移住者向けに貸し出すことができました。
補助制度は市区町村によって内容や条件が異なるため、「〇〇市 空き家 補助金」といったキーワードで公式ホームページを確認するのがおすすめです。
登記を済ませることで、こうした公的な制度の利用もスムーズになります。せっかく相続した家を活かすためにも、ぜひ制度の活用を視野に入れてみてください。

まとめ
空き家を相続したとき、まず行うべきは「相続登記」です。名義変更をしなければ、売ることも貸すこともできませんし、補助金などの制度も使えません。登記には多くの書類と手続きが必要ですが、事前に準備をしておけば自分でも進められますし、専門家に依頼することで安心して進めることも可能です。
登記が完了すれば、その空き家をどう活用するかの選択肢が広がります。売却や賃貸、空き家バンクの活用など、家に合った方法を選ぶことで、負担を軽減しながら有効に活かすことができます。また、固定資産税や管理の手間といった現実的な負担もあるため、長期的な視点で計画を立てることが大切です。
多くの自治体では補助金やサポート制度も整備されつつあります。制度の活用や地域との連携も視野に入れながら、せっかく引き継いだ家を「負の遺産」にしないよう、できるだけ早めに行動を起こしましょう。
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